家づくりの打ち合わせで「できるだけ明るい家にしたいから、窓を多くしたい」とおっしゃる方は少なくありません。確かに、大きな窓から光が差し込むリビングは気持ちがいいものです。けれど、近年の「高性能住宅」では、あえて“窓を減らす”という設計が注目されています。窓を減らすことで、むしろ快適で、省エネな暮らしが叶うのです。
では、なぜ「窓を減らす」と快適になるのでしょうか?
まず知っておきたいのは、窓は「家の中で最も熱が出入りする場所」だということ。夏は暑い外気が、冬は冷たい空気が、壁ではなく窓を通して出入りします。高性能な断熱材を使っても、窓がアルミサッシでシングルガラスのままだと、せっかくの断熱効果が大きく下がってしまうのです。
高性能住宅では、窓の配置と性能を「必要最小限かつ効果的」に設計します。たとえば、南側に大きな窓を設けて冬の日射を取り込み、東や西には小さめの窓を配置して、朝夕の強い日差しをカット。北側の窓は、採光よりも通風やデザイン性を優先してコンパクトに設ける。そうすることで、光と風を上手にコントロールしながら、室内の温熱環境を快適に保てるのです。
また、窓を減らすことで得られるメリットは、断熱性能だけではありません。プライバシーの確保、防犯性の向上、家具配置の自由度アップ、メンテナンスの軽減など、暮らしやすさにも直結します。特に住宅が密集する都市部では、隣家との距離が近くなるため、大きな窓よりも“抜け感を意識した窓配置”が効果的。視線を遮りながらも明るさを感じられる「高窓」や「スリット窓」、「吹き抜け窓」などを上手に取り入れると、プライバシーを守りつつ開放感のある空間をつくれます。
そして、高性能住宅では「窓の性能」も大切な要素です。樹脂サッシやトリプルガラスなど、断熱性の高い窓を採用することで、少ない窓でも十分な快適性を実現できます。特に、冬場の結露を防ぐことでカビやダニの発生を抑え、住まいの健康を守る効果もあります。
キノエデザインOSAKAが建てる「深呼吸する家」でも、窓計画はとても重視しています。単に光を取り入れるためではなく、「一年を通して心地よく過ごせる空間」を設計の軸に置いています。室内の空気がこもらず、漆喰や無垢材などの自然素材と相性の良い通風計画を行うことで、家そのものが呼吸するような、やわらかな空気環境を実現しています。
“窓を減らす”という考え方は、決して暗い家をつくることではありません。住む人の暮らし方、敷地の条件、そして性能を踏まえた「最適な窓の数と位置」を見極めることが、本当の意味での快適さにつながるのです。
家づくりの打ち合わせでは、つい間取りや広さに目が行きがちですが、ぜひ一度「窓の計画」にも注目してみてください。光と風のバランスを整えた住まいこそが、長く快適に暮らせる“深呼吸する家”の基本なのです。